日本の水産業は終わった14

 再び漁船ネタ。


 http://www.norway.or.jp/about/business/industries/maritime/

 先日、ノルウェーで海洋産業関連の見学会があった。この三十年でノルウェーの漁業産業は世界一になったという。欧州では船の設計と実際の造船はそれぞれ別の会社が行う場合が多いが、日本で設計会社は造船所の下請けに過ぎない。造船所の設計部なみの経験と知識を持っていても、誰も使ってくれない。頭脳(ノウハウ)は自分達で守り、人件費の安い海外の造船所で船を建造するスタイルを取るヨーロッパの船主とは環境や考え方が違う。船は何年も運航してようやく良い船なのかどうかが判るのだが、安い船を中国で建造し、船舶管理を外部の管理会社に任せて、第一回のドライドック検査前に売船する船主にとっては、品質よりも初期投資の低さだけが重要である。

 海洋産業 :ノルウェーは、ヨーロッパで最も多角的な経営を行なう海洋国であり、海運に関する専門知識、設備、新しいすきま(ニッチ)市場を開拓する能力という点で、世界中から注目されている。 ノルウェーの海洋経済全体(海運や養殖産業に関連する一連の産業で、その数は増えている)は拡大しつつあり、多岐に渡る製品やサービスが含まれている。

 特殊船舶造船所 :ノルウェーの造船業界には、国際競争力を持ち、高度な技術を備えた中小の造船所が50社以上存在する。 主に船の修理のほか、荷揚げ下ろしが直接出来るRORO船、化学タンカー、高性能漁船、冷蔵船、洋上補給船、高速双胴船のカタマラン船、ケーブル敷設船、物理探査船などの特殊船舶の建造に重点を置いている。

 最新式船舶と漁業設備 :ノルウェーの船舶設備産業は、ノルウェー所有の船舶数が着実に増加するのに伴って発展してきた。 船舶設備メーカーは、デッキ・ウインチや船の照明器具から最も高度な技術を使った電子式荷役システムや船体姿勢制御システム(DPS)まで、最新式の製品を幅広く提供している。 沿岸や深海で漁を行なう漁船用の特殊設備は、もう一つの重要なすきま産業(ニッチ・ビジネス)になっている。巻網、刺し網、モーター、ウインチ、クレーン、魚の荷揚げ用設備のほか、高性能な航海システムやスラスター・システム、方向転換システムのような耐久性にすぐれた近代的な漁業設備を使うことによって、漁師はできるだけ効率的に獲物の位置をとらえて捕獲し、運搬することができる。

 養殖設備 :過去30年間でノルウェーの養殖産業は世界で最も進歩している。 ノルウェーの養殖設備メーカーは、繁殖システム、ケージング・システム、飼育システムや監視装置、水産物加工技術などの様々な水産物養殖設備を開発・製造している。

 個人的には大型漁船を建造できる造船所だけでなく、商船や巡視船、自衛艦を含めた日本の造船所全体の技術力が落ちていると思う。研究開発に予算を投じずに韓国や中国との競争に勝つために、多くの日本の造船所は同型船だけを馬鹿の一つ覚えのごとく受注しているのが現実だ。オーダーメイド的な船を受注しても新設計で1隻しか建造しないような単発仕事は営業採算ベースに載せるのは土台無理だし、設計部門も対応できるだけの技術者はいない。内航船や近海船を建造しているような造船所は、作りは丁寧かも知れないが、外国の船主が求めるようなメリハリのある船を作るのは難しい。英語でのコミュニケーションの問題、国際条約や英語で書かれた各種規則書の理解など問題が山積みだし、英語が出来ないからと商社に頼りすぎると、ほとんどの儲けを取られてしまう。

 日本の漁船は、漁業資源状況の悪化と魚価低迷、燃油価格や漁業生産資材の高騰などで新船への代替更新が進まずに船齢の高齢化が進み、修繕費の増加を招き、生産手段である漁船漁業の維持・再編が出来ずに不良資産と化した旧式漁船が経営状態を圧迫するという負のスパイラル状態になっている。昨年の水産白書によれば許可漁船の中央値は19年、21年を超える漁船は全体の4割に達しており、その中には30年を超過する漁船も確認されていて、この問題の深刻さが伺える。2007年に水産基本計画の変更がなされ、収益性向上のための「漁船漁業構造改革対策」が実施され、経営転換の促進を図ることにより経営の安定化と漁業政策の両立を担っているが、問題なのはいずれも「小型化」を志向している点である。日本における資源管理手法は
 
 ①漁船の許可隻数、総トン数による加入規制
 ②漁獲量の割り当てによる出力規制
 ③漁期漁法の技術規制
 
 に寄っている。それというのも50年に改正漁業法が制定されてからこの方、「漁業管理」の基準を「資源管理」ではなく「漁船管理」に置いているからだ。漁業の管理・調整を漁獲量の割り当てによる出力規制よりも漁船の許可隻数、総トン数による加入規制で漁獲努力量を推定し、水産資源の管理を行ってきたので、実質的に漁船の総トン数=漁獲努力量となっている。問題はこれが漁業法に定められている点である。漁船の船長、幅、深さの三変数の組み合わせで許容される全容積が決まってしまうため、どれか1つでも変更しようとしたら必然的に他の2つもいじる(小さくする)必要がある。この漁業法による規定は漁船の大規模な改良・進化に「空間」という大きな制約を課した。劣悪ともいうべき居住環境や作業環境、進まない機械化やシステム化はかような空間的制限がもたらしたものであり、それがために日本の漁船は外形的にも昔からほとんど変化しておらず、数十年前に完成された船型を不磨の大典のごとく使い続けている。

 94年に国連海洋法条約が発効し、96年に日本は同条約を批准したわけだが、そのために自国のEEZ内における生物資源の保護(61条)と生物資源の利用(62条)を行うために、翌97年にTAC制度が導入されたのだが、現行制度下では個別割り当て(IQ)制度ではなく、単なる総漁獲量管理に過ぎず、オリンピック方式による早い者勝ち操業になるのは火を見るよりも明らかであり、事実乱獲に拍車がかかっただけだった。したがって資源管理に絡む要素は漁具や漁労機器、主機関出力、魚倉容積であり、漁船の許可隻数、総トン数による加入規制で資源管理を行うことはできないからだ。水産庁の考えるコンセプト自体がすでに破綻している。

 これは漁船の海難事故にも影響を与えている。漁法によっては大きな漁具を使って大量の漁獲を行うのだが、操業時にしばしば転覆することがある。言うまでもなく復原性能の評価は建造時に行われているのだが、小型漁船の場合、前述の理由で空間容積が十分に取れないため、実質的に軽貨状態でブルワークを含めた余裕のない性能設計になっていることが多く、大量の漁獲物の入った漁具を揚げて横傾斜角度が大きくなったところへ波浪等の外力が影響した場合、ブルワークを超えて甲板上に海水が流入してしまい、あっさり転覆してしまうので十分な復原性能を有しているとは言いがたい。ことほど左様に現在の漁業法による総トン数規制は漁船の設計および生産システムの進化に対する大きな障害となっている。既存の漁船規模(総トン数)を基に新たな生産システムを考える場合には既存船体に新たな生産システムを組み込むよりも生産システムにあった船体構造を設計する方が効率的であり安全である。更新の度に同じ大きさのドンガラに押し込めて漁船を造っても改良どころか新たな遭難候補を作り出すだけでしかない。

 北欧やEU先進各国と日本の漁船の比較研究が一時期よくなされたが、その中でノルウェーやオランダの漁船は資源保全のために魚倉容積を規制する以外は自由に設計できる。復元性だけではなく、作業性や居住性にも配慮した設計になっている。労働環境を中心に考慮された設計は漁労作業の流れを決定し、必要な機械化・システム化に十分対応できるだけの容積を持ち、問題があれば速やかに改良・改善を施せるようになっている。このように国際基準に準拠した居住設備と船舶の耐航性能が確保され、漁労設備のシステム化がなされるようにしなくてはならない。事故原因と防止策を考えた際に、空間的制約の基での改良のみに限定される日本漁船の近代化には限界がある。この際、空間という自由度を設計技術者に与え、漁業法の規定から悪しき漁船の総トン数を切り離して議論をすべきであろう。三保造船所、カナサシ重工、新潟造船は近海船も建造していたが、利益を出すには難しかったと思う。技術を持っていても、評価してもらえない、連続で技術が使える付加価値のある船を受注出来なければ、いずれ消滅するだけだ。だから下記のようなことを人間は無知で馬鹿でしかない。

 http://blogs.yahoo.co.jp/zero_herr/26811154.html

 …本来このノルウェーの位置には日本がなっていた筈なんだけどね。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

なるほど(納得、参考になった、ヘー)

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック