公妾制度と側室制度の違い

 同じ事でも両者には天地の懸隔がある。


 側室とは、正室に対する概念で、正室が生きている間に高貴な身分の男性(天皇、公家、大名級の武家)が傍においた愛妾、または寵愛を受けた女官・女房・女中などを指す(後添えは正室を継いでいるので「継室」である)。正室の位置付けが「家族の一員」であるのに対して、側室はその出自によらず、あくまで「使用人」という位置付けである。

 なぜなら女性一人が生涯に出産できる子供の数は限られており、正室の健康状態や、不妊問題、夫婦の不仲問題などから、子ができないこともある。そのため、男系男子の子孫が安定的に確保できるとは限らないので、側室を持つことにより、男系男子の子孫を絶やさないことが最重要視されており、それがために日本における側室制度とは、「それを担う使用人を採用する」という考え方である。特に武家の場合は嫡男が途絶えると即座に御家断絶になるため、家臣団が揃って浪人になる社会問題(=不満を持った浪士に乱や事件を起こされると治世上困るから)を防ぐ観点からも御家存続を第一としている。そのため幕府は些細な不正(表沙汰にしない嫡子の入れ替えや届出の不備など)は敢えて黙認している。大名家が他家から養子にすると莫大な金がかかる上に手続きが面倒だったのだろう。

 しかし、欧州の公妾制度はそれとは全く異なっている。日本のような「借り腹」という概念は全くなく、伝統的に非嫡出子には相続権を認めてこなかった(認めると反国王一派が担ぎ出して逆に内乱の元になるから)欧州諸国では、ごく一部の例外を除いて、国王と公妾の間に産まれた子には、王位継承権は存在せず、男子は爵位を得て家臣団に列せられ、女子は自国内または他国の良家に嫁がされるのが通例であった。なぜなら王位継承権争いを回避できるともに家臣団または同盟国を戦争ではなく血縁関係によって増やせるという一石二鳥の行いであるからだ。国王に立ち向かえるほど王侯貴族が強かった本国やフランスでは特に重要だったから、このように公妾が生んだ子であっても高級貴族として十分に生きていくことが可能な土壌ができていた。

 公妾は対国内外的に公式な地位(=Royal mistress)として扱われており、ルイ15世の公妾であったポンパドゥール夫人に代表されるように重要な廷臣として、内政、外交、戦争、人事、芸術など、幅広い宮廷政治と宮廷文化の運営維持に対する大きな発言力を持つことも珍しくなかったし、公妾の生活や活動にかかる費用は公式に王廷費からの支出として認められており、単なる王の個人的な愛人としてではなく、社交界へも積極的に出席し、常に社交界の花形であり続けた。特に公妾が主宰する贅沢なサロンは外国に対して、国威を示す役割をも担っていた。

 なぜなら政治的な意味合いが強い王妃(皇后)よりも、本当に気に入った公妾の方が国王に対する発言権は強かったために、国王を動かす権力(≠権限)を有し、外務省とは異なるルートで持ち込まれる内政・外交問題の対外窓口としての公設秘書兼外交官的な役割を果たし、またそれゆえに情報網も極めて正確で、国王や王妃(皇后)が不幸な王室スキャンダルにまみれることを未然に防止するという、体を張っての防波堤の役割さえも担っていた。このように公妾を表立たせることは不貞どころかむしろ、国王や王妃(皇后)に対する国民の不満や批判をかわす面からも重要な意味合いを持っていたからだ。事実、公妾が居なかったルイ16世は、かの有名な「首飾り事件」における国民の攻撃対象がすべて王妃マリー・アントワネットに集まってしまった。

 ただし、王妃(皇后)が政略結婚の道具として各国の王室や有力王侯貴族の王女の中から嫁がされる代わりにその身分と地位を終生保障されるのに対して、公妾は家柄を重視されない代わりに、実力で国王の寵愛を獲得しなければならなかった。もちろんその過程で王妃(皇后)、他の王族から不興や嫉妬を買ったり、有力な王侯貴族間の権力闘争や社会情勢不安に巻き込まれたりしてしまい、他の王侯貴族や民衆からの恨みや憎悪を一身に背負うこともあったので、権力はあれども自身の後ろ盾が国王の寵愛しかない公妾は常に不安定な境遇と立場に置かれていた(ちなみに公妾は一代限り。しかも公妾が身につけようとする才気や教養は王侯貴族や宮廷で求められる上流階層のモノではなくて、基本的にポジションの近い(=頭は良いけどランクは低い)、文人、哲学者、芸術家といった知識階層のモノである。つまり上流階層の雅言葉になじめず、(上流社会において)しばしば恥知らずな言葉を話していて冷笑されている)。

 公妾の立場が一番問題になるのは国王の寵愛を失った時である。法律上、公妾は1名しか置くことができないからだ。国王が崩御した場合や、現在の公妾への国王の愛情が何らかの理由で薄れてしまい、誰か別の女性を愛したいと国王が思った場合には、今の公妾を廃してから新たな女性を任命することになる。上記の理由で公妾の地位を追われてしまった女性は、国王から年金を支給されて別邸で余生を送るというのが通例だが、当然のことながら、華やかな宮廷生活から途端に冷遇されてしまい、他の王族や王侯貴族からは嘲笑の的となり、非常に哀れな生活実態であり、扱いの低下に耐え切れなくなった元・公妾はしばしば修道院に逃げ込んでそこで余生を過ごすことになった。それを嫌って事前に許可を得て再婚した者もあった。

 …オーストリアは無いよ。神聖ローマ帝国の末裔だもの。

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