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zoom RSS 客船の座礁

<<   作成日時 : 2012/01/18 07:24   >>

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 客船は普通、一番安全な航路をとるもの。


 イタリアのコスタ・コンコルディア号が浅瀬に座礁したとのニュース。比較的リーズナブルなカジュアル船だけど、こういうことがあると痛い。昨夜見たときには、「傾いていた」が、一夜明けた今日は完全に「横倒し」になっていた。船腹を見る限り岩礁でこすったと思われる大きな穴がある。そこそこの高速(16ノット前後)で航行していたらしく、かなり長い。船舶は浮力で浮かんでいるので、同じ接地面でも水なので運動エネルギーに変換できる。そのため、浮力>重量である限り多くの荷物を積んで運べるが、その重量は質量保存の法則により変わらないので、わずかな障害物に衝突しただけでも自らの船体を破壊するエネルギーに使われてしまい、甚大な損傷をこうむってしまう。しかも船が損傷して大量の浸水が起きた場合、その重量がすべて負荷に変化してしまい、浮力<重量になって沈没してしまう。船内照明が消えたということは発電機が冠水したことを意味する。この場合、隔壁閉鎖も排水ポンプも作動不能になるため、浸水を食い止めることが出来ない。浅瀬で座礁したから、潮が引くと浮力がなくなり、バランスが崩れて横転する。座礁した岩の周りが深い海だと、座礁であいた穴から海水がどんどん入って沈没することもある。乗客の話では一気に急傾斜したとある。反対舷にも水が入って重心が上がり、バランスを一気に崩したのだろう。これでは舷側の固い救命艇は降ろせない。ゴムボートも重ければかなり大変な作業である(正常に浮かんでくれればよいがしばしば逆向きになる)。暗い時間帯、露天甲板までの脱出もやっとの思いだ。

 コスタ・コンコルディア号はイタリア製だ。巨大客船を建造する設備とノウハウを持つ造船所は、世界にわずかしかない。昨年ほぼ同型のコスタ・セレーナ号に乗船したが、何度も言うようにこの会社の船はデカイけど、キュナードのような高級路線の船ではなくカジュアル船である。船が大きいからといって全て豪華客船と考えるのは間違いで、乗船料金は10万〜30万の薄利多売の安価な船賃である。乗船しているのも普通の生活レベルの人たちだ。日本からの飛行機チケット代を考えなければ、安い船室ならば、今なら3食付きで1日1万円以下でもある。日本人にはクルーズというとバブル期のクルーズ元年に代表されるような豪華客船としか考えない人が多いが、欧州やカリブ海あたりでは、メジャーで家族パッケージとかカップルパッケージもあったりしてお手頃なのも多い。もちろん、超高級クルーズもあるが、割合としては少ないし、むしろ日本国内の正月の温泉宿の方がよほど高い。最近は地中海クルーズは通年で行われているが、もともとこの時期の地中海は荒れやすくオフシーズンだった。オフシーズンなので、夏のオンシーズンと比べて値段も安く設定されている。客船大型化→資金回収のために通年行われるようになっという話も聞いている。数年前にも大きく揺れる船の中の様子が動画で公開されていたが、11月のクルーズだったと記憶している。ここまで大きい事故は滅多にないだろうからこんな目に合うとは予想できないけれど、地中海クルーズを考えている人は、値段だけを見ないで、本来は適さない時期だということは覚えておいた方がいいと思う。

 今回は運用側のミスの可能性が高い。航路選定ミスまたは人為的な航路からの逸脱(出港が遅れたor早く目的地に着きたいなどの理由で速度制限のある航路を選択しない)、海図記入の誤り(水路通報の修正ミス)、水路測量当時は危険の無かった障害物が、その後海流の変化等による堆積の進行で「成長」して危険になっていたなどさまざま理由は考え付くが、同船のフランチェスコ・シェッティーノ(Francesco Schettino)船長はこともあろうに最後退船義務を放り出して下船してしまった。いかなる理由があろうとも船長は全ての乗員乗客の退船を見届けてから下船する義務があり、この一事で世界で最低の馬鹿船長のそしりは免れなくなった。不幸中の幸いなのは洋上のはるか沖合ではなくて、陸岸至近だったことだ。だから単に座礁して傾斜しただけなら、飛び込むのはアウトだ。何せ下は浅瀬なんだから、中古船が相当の大時化で座礁した限りとかで無い限り、船自体が転覆したり折れたりする危険は少ない。むしろ下手に飛び降りると岩礁に体や頭を打ち付けて全身打撲で死亡しかねない。報道ではひっくり返った船の映像ばかり流れているが、人命救助が第一。ついで原因究明となるが、それでも様々な事故が起こるたびに「安全神話」の問題が取りざたされている。そして、いつも事故が起こってから危険性を知りながら放置していた企業の問題が指摘され、また時には、どんな物にも事故の危険性はあるのだから、利用した者の自己責任だと指摘され、双方の立場から喧々諤々の議論がされるわけだが、共通するのは、半年もするとそんな事故があったことさえ誰もが忘れていることなのだ。そして、どんな対策がとられたのかも検証されることもない。我々はただ、次に事故が起こるのを待っているにすぎないのだ。

 ・・・ユーロ圏の国債が格下げされた日に座礁か。しかも当日は13日の金曜日。

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