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zoom RSS エーリッヒ・フロムの問題点

<<   作成日時 : 2011/05/15 00:33   >>

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 問いの立て方が間違っている。


 社会も個人も、文化の影響をいかに受けるかという問題を、精神医学の臨床で応用しうるに至る論理化へみちびき、またセラピーに反映した点は、功績として数えてもよい。だが彼は社会心理学者ではない。精神分析を医学以外の分野に応用した際に精神分析の誤りが露呈してしまう事がある。社会心理学ならばフィールドワーク、ケースワークが必要不可欠だがそういうものは全く無い。つまり社会のダイナミクスの予見を立てるものではない。彼の著書「愛の技術」を読んだが、愛の技術を習得するには、(1)理論に精通すること、(2)修練に励むこと、(3)技術を習得することが重要だと述べているが、これでは、相手と生産的に関わりあったときにしか成立しない。生産的な愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気にかけることであり、愛の本質は、「なにかを育てる」ことにあるが、一般的に教育とは、他者が可能性を実現してゆくのを助けることだ。そして生産的に愛するには、信じること(信念)が必要だ。信念をもつには勇気がいる。勇気とは、あえて危険をおかす能力であり、苦痛や失望さえも受け入れる覚悟である。愛について語るとき、いちばん難しいのは、自分と他者が異なる存在だということを維持しながら、いかに一体化させるかである。他者に尽くせば、一体化できるかもしれないが、他者に依存してしまうことになる。自分の存在を持ち上げて他者の存在を消去すれば、一体化できるかもしれないが、他者を支配してしまうことになる。E・フロムは、このパラドックスを見事に解消している。「与えるということは、他人をも与える者にするということであり、たがいに相手の中に芽生えさせたものから得る喜びを分かちあうのである」と。

 だがこれを社会心理学の面で見ると問題がある。E・フロムはマルクス主義的な経済重視の世界観から著書「自由からの逃走」の中で『受容的性格・貯蔵的性格・搾取的性格・生産的性格・市場的性格』という5つの性格類型を定義している。それによればE・フロムが5つの性格類型の中で最も高く評価していたのは利他的な生産的性格(productive character)であり、生産的性格の持ち主は自己の能力・才能・権力を『社会全体の利益・発展』のために惜しみなく用いることができるとされた。他者の自由や権利を奪い取って他者を社会的・経済的に阻害するのが『搾取的性格』であり、他者の自由や権利を拡大して社会的・経済的な相互利益を高めていけるのが『生産的性格』である。 だが『市場的性格(marketing character)』は資本主義社会の自由市場(市場経済)を支える典型的なパーソナリティであり、労働市場・商品市場の需要に合わせて自分の価値観や能力を適応的に変化させられる性格構造のことである。E・フロムは市場的性格を「個人の自由・尊厳」を捨て、不正な資本主義社会(権力構造・経済システム)に迎合する性格だとしてネガティブに評価したが、現実社会では市場的性格の人は高い生存適応力を持っている。 したがって相手に迎合するのでもなく、自分に服従させるのでもなく、個を確立させることは十分可能だ。資本主義的な経済システム(財の配分システム)が個人の性格構造を規定することはあり得ない(環境は同じでも生き方はそれぞれ違うのだから)。

 ・・・『赤ずきん』に出てくるずきんの赤さをシャルル・ペローのプロットだということも知らずに「月経の血」とか勝手に解釈して、児童文学者のロバート・ダーントンに、「精神分析学者のフロム氏は存在しない象徴を超人的な敏感さで嗅ぎとって、架空の精神世界へ我々を導こうとした」と批判されているようじゃ修行が3千年ばかり足りんね。

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