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zoom RSS  ふたりは現実主義者

<<   作成日時 : 2011/02/05 00:41   >>

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 両者共にバランス感覚が欠如している。


 熊耳と香貫花が顔あわせするという話が機動警察パトレイバー新OVA版の9話「VS(バーサス)」で描かれている。二人共に優秀、実力主義者でありながら、あくまでアメリカ人としての合理主義的価値観を持つ香貫花と、日本的な保守主義的価値観の熊耳とでは、最悪の相性として描かれている。それを端的に表しているのが指揮時におけるデータの扱い方の議論である。

 香貫花「データは常に頭に記憶するべき。記録媒体では必要とする時に使えないことがある。」
 熊耳「すぐに取り出せる位置にあれば問題ない。頭の中の記憶では思い出せないことがある。」

 これで喧々諤々の議論を朝まで続けるのだが、確かに能力的には二人とも優秀だ。その点に異論は無い。だが、上記のやり取りには先の「出身軍隊別CEO」の能力評価のように非常におかしな点がある。指揮官として優秀かと言われると否定せざるを得ない。それは 「部下の存在が出てこないか、出てきても自分と同じだけの能力と考えを有していること」が常に前提となっているというこの一事に尽きる。自分と同じ能力・考えを全員が共有できる組織であれば、どんなにどうしようもない馬鹿を上に推戴しても仕事の邪魔さえしなければとりあえず機能する。そうではなくて、第二小隊の人間同様に能力やパーソナリティにムラがある人間が配属されてきても、それを受け入れてある程度教育して使いこなせるようにしなければ組織として機能しない。それを指揮官が自己の考えに拘泥し、部下の意見を聞かず、部下が対応に困惑し、進言することを恐れて口をつぐみ、対応を別に協議しなければならないような組織は甚だ不健全な組織であると言わざるを得ない。

 良い指揮官の条件は「与えられた条件で常に最良の選択をして部下を死なさずに目的を達成すること」であるが、これなら内海課長や後藤隊長の方がモノを壊して人に迷惑をかけているとはいえ、部下に対する上司のあり方としては、はるかに優秀だ。内海課長はきわめて高い社会的能力を持ち、それを積極的に、攻撃的に行使することで、自分の趣味性を曲げることなしに、世の中とつきあっている。部下を掌握し、上司と互角以上に戦い、その頭ごしに組織の最上位者とパイプを保ち、情報収集と分析、戦略的、そして戦術的な判断をも、自ら行っている。自分たちの外側に存する組織の挙動についても、その原理と行動範囲を理解している。そしてそれは、自分以外の個人についても適用され、内海課長は作品中の全人物について(ただし一人を除いて)、適切な誤差範囲の見積りで、適切な行動予測を行っている。彼の計画の成否がきわどいのは、彼の判断と予測に誤りがあるためではなく、適切な判断と予測の上で、なおきわどい水準で計画を立てているからだ。

 ただし、内海課長には社会を打ち崩し、あるいはさらに再構築しようという、古の革命家のような姿勢は微塵もない。彼は社会を自己実現を阻害する障害と捉えてもいない。彼にとって社会は、ある程度の難易度をもった操作可能なシステムであって、この社会への取り組み方は、それほど特異なものではない。だから特車二課の後藤隊長はもちろん、内海課長の上司のシャフトの平光専務やその他、かなり多くのおっさんがそのように社会システムの中を動いている。周囲上下の個人と交渉あるいはそれを操作し、周囲上下の組織と交渉あるいはそれを操作する。社会性というのはそのへんを指す。社会性という概念を、社会システムを保守維持すればするほどそうだ、と考えるのは誤りで、おっさんたちは時と機と位置によってひょいひょいと保持側と変革側をまたいで動く。うまく立ち回った結果、システムが違うものになっても、あるいは維持されても、彼らにはどちらでもよいのだ。つまり、影響力を増大または維持するような動きをしたおっさんしか、社会システムのなかでカメラフレームに写る/観客の前の舞台にのぼってこないということである。

 例えば部下が上司に意見をする際にも、頭の良い上司は積極的に発言に耳を傾ける。あくまで意見を取り入れるか取り入れないかは上司の判断だから立場が揺らぐことはないし、その一方で自分一人が思いつく発想、できる限界をきちんとわきまえている。だから発言内容そのものに怒ることはまずない。一方で社の害悪とされるような上司は、部下の発言というだけで「何様だ!」と突っぱねる。階級意識というか、自分の立場やプライドに執心して周囲が見えていない。自分は偉い、自分の判断で何でもできると思いこんでいるから、建設的な意見もそこで封鎖されてしまう。たとえばサッカー日本代表の本田の発言を建設的と捉える人は前者、偉そうと捉える人は後者だろう。自分一人だけで守備も攻撃もできないと理解しているからこその発言だ。むしろ彼は立場をわきまえ、よく理解している。ただ単に偉そうとしか感じることのできなかった人は要注意だ。だから部下を淘汰したり信用できないような指揮官は指揮官として不適格である。二人には「部下の能力を十全に引き出す」ということが備わらない限り、人の上にに立ってはならない。

 ・・・服を着せた時に何でも似合うのは香貫花だったなぁ。

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