海を往く者

アクセスカウンタ

zoom RSS 国立高専の秘められた能力

<<   作成日時 : 2010/12/21 00:34   >>

面白い ブログ気持玉 3 / トラックバック 0 / コメント 2

 地は優秀なんだけどね。


 国公立高専の優秀さは、知る人ぞ知る話なのだが、有名大が多数ある大都市圏はともかく、地方ではおしなべて高専の偏差値は高い上(場所やコースにもよるが、県内で2〜3番目の高校の偏差値が必要)に、かなり受験希望者の人気が高い。しかも、社会が受験科目にないので、文系を苦手とする理数系に秀でている学生が多い。いわゆる地頭(じあたま)がいいわけで、技術者にはうってつけの存在である。就職もほとんどの高専の学生は教授推薦だけで就職できてしまうため、何らかの特別な理由(金融や環境系の畑違いの会社に進みたいとか)が無い限り、リクルート会社にエントリーすらしないのが普通だ。ちなみに高専の学生は大抵以下の4パターンが多い。

 1.頭はいいけど、受験勉強がイヤなので、大学には行かない。
 2.頭はいいけど、家庭の事情で、大学には行けない。
 3.理数系が大好きで、中学校の時点で理工系に決めた。
 4.まともに受験するよりも、高専から編入したほうが国立大学に入りやすい。

 大学時代に、配属された同じ研究室で、天才としか思えないような極めて優秀な大学院生がいたが、彼は高専からの編入組だった。その後に中途採用で入った大手無線機器メーカーで、同期の高専卒は、大卒の人間よりも頭がとても切れる人間だった。ことほど左様に高専出身者が優位な点は、学生の資質だけではないのだ。例えば先の国立高専の『基礎電気工学』のテキストを見る機会があったが、磁気とコイルの項目で「2本の導線に電流を流すと、導線は互いに、反発もしくは引き合う。」というフレミングの法則に関する記述があった。これは「導線に電流を流しただけで、力学的な力が生まれる」と言っているだけなのだが、この動作原理が非常に判りやすく書いてある。もしこれがウソなら、モーターは回らないことになる。だから定量的かつ定性的に学ばないと動作原理が理解できない。ところが大学のテキストでは、これが無味乾燥に数式のみで説明されているだけだった。これは重大な問題である。「なぜ、電流で力学的な力が生まれるのか?」ということについて説明が全く無いから、学生が大切なことを忘れているというか知らないのだ。だから『線形代数』を知らないと公然と言い放つ工学部の大学生がいるのだ。『線形代数』は、大学の数学における基礎中の基礎なのだが。

 高専は、テキストだけではなく、カリキュラムも良くできている。大学のような教養科目は最小限におさえられている代わりに、1年次から専門性が高い内容を時間をかけてじっくりと学ぶ。たとえば、電磁気学は、一年次に『電気基礎1』があり、二年次にはその演習問題と実験が入る。同じ内容を、方法と視点を変えて、段階的に、繰り返し学んで積み重ねていくので大卒よりも技術の本質を理解しているため、応用が利くし、何と言っても、卒業の時点で2年も若い(専攻科なら大学生と同じなのにさらに優秀)。これが学部生であれば3年まで全く触れない。こと電気工学に限って言えば、半導体のように物理関係の量子力学でもからまない限り、高専卒の方が優秀だ。正直な話、極端にとんがった専門分野をのぞけば、『業務知識』は後でどうにでもなるし、『コミュニケーション能力』は目をつぶってもいいだろう。だが、『論理的思考力』と『高い技術的センス』は妥協できない。ちなみに、高専卒は即戦力だと思われているが、実は伸び白の多寡で言えば、大卒より高専卒のほうが前述の理由で後で伸びる可能性が高い。技術の判る経営者ほどその考えが多い。

 ところがこのカテゴリーに当てはまらない高専がある。それは商船高専である。現在の海運会社や造船会社では海技者としての技術そのものよりも、企画立案能力、プロジェクト管理、マネージメント能力を求めており、高専もそれに合わせたような教育内容になっている。これでは高専の大学化でしかないのだが、取得する免状が同じで、外国人船員を相手にするため、英語が必須であり、技術的なことよりも陸上における船舶管理を求められる今の海運会社では正直、高専の存在意義は急速に低下している。内航船は海上技術学校の本科生で用事が足りてしまうため、わざわざ高専卒の給料を支払う理由が無い。さりとて大手海運会社の冠企業である陸上の管理会社に行ってしまうと「高専卒」扱いされてしまい、役員にもなれない。大学に編入しようにも航海系のコースは機関系と異なり、東京海洋大、神戸大、東海大ぐらいしか受け入れ口が無い。しかもそこで取得できる海技免状はすでに取得しており(高専は卒業要件の関係で大学のように乗船実習の参加を選択できない)、大学卒という新卒パスポートを得る以外に進学する意味は無いからだ。水産系に転向する方法も無いわけではないが、「船舶運航のプロ」を目指していたのに「海洋観測のプロ」となるのはなかなかに難しい。

 …知るは好きにかなわないが、好きは楽しむにかなわない。





なぜ高専の就職率は「100%」なの?
文芸社
佐々木 章太

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by なぜ高専の就職率は「100%」なの? の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 3
面白い 面白い 面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
友人も2名高専に進学しました。
私の世代では高専に進学する事自体
「エリートコース」見たいなもんでした。

>好きは楽しむにかなわない。
含蓄のある言葉かと・・・・

ちなみに私は水産高校の「無線通信」の分野に
行こうかと真剣に考えておりました。(^^ゞ
ebi
2010/12/23 21:39
どもども。

>高専に進学する事自体「エリートコース」

 Fランク大学どころか地方駅弁大より上ですからね。人生楽しんだ方が勝ちですよ。(^^ゞ

@水産高校の「無線通信」

 面倒見は良いし、同じように就職は出来るのですが…無線通信科がGMDSSのおかげで潰れていっているのを見ると、行かなくて正解かも知れません。
Flagship
2010/12/25 07:29

コメントする help

ニックネーム
本 文
国立高専の秘められた能力 海を往く者/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる